地名は黒土という。
数年前まで携帯電話の圏外だった。

無動寺も馬城山伝乗寺(真木大堂)と同じく、広大な寺域を誇った寺だが、今では“里の寺”である。

「でも」

鏡子さんによれば、
ここに“国東”が凝縮されているという。
裏手に回れば、雑草に羅漢像が埋もれている。
権現社もあり、おなじみ神仏習合の名残りを留める。
塀の中にも雑多な石仏や小塔がある。

そして、本堂……。

中に入ると、ここが普通の里の寺ではないことがわかる。

不動明王の威圧感。
空気が変わったのがわかる。

そして、圧巻は天井絵。
現代の絵画で水彩画の透明な光に溢れている。

テーマは大きく3つ。

地獄の恐ろしい鬼(獄卒)。
草木に宿る仏。
生命の誕生。

一組の男女が虚空を舞う美しい絵だ。
裸だが、男女の特徴は描かれず中性的で、神秘的ですらある。

いつの間にか、鏡子さんと手をつないでしまっていた。

「場所をわきまえてください」




- 無料レンタルホムペ桃 -