拝観券売り場で、杖を薦められた。
私は不要だ。坂の町の住人だし、ここは初めてではない。

鏡子さんも断った。ハイヒールを運動靴に替えていた。

「でも、バテたら、お姫様だっこしてね。見ての通り、軽いから」

どんなに軽くても無理ですね。参道は岩ゴツゴツなんですからね。
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不動明王と大日如来。

メインの2体は 相変わらず荘厳で威圧的だ。

ところで、大日如来の方は、薬師如来かもしれないとされている。いわばバストショットで腕が造られていない。印相(つまり、指の形)がわからない。持物もない。

不動明王は、これもまた例外的な、柔和な表情だ。


これら摩崖仏のさらに上には、熊野社がある。古い神社で、実は摩崖仏はこの神社に属しているらしい。

神仏習合とは、そんなものらしい。

神社の拝殿の奥へ、鏡子さんは進んでいく。

「ここは、この世とあの世の境」

確かに、そんな雰囲気だった。

私物のような小さな仏像。赤いよだれかけ。古くなった供物。

怖い。

その時、頭上を飛行機が通った。
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