「田染(たしぶ)よ」

富貴寺を出発して小さな峠を越えると、急に視界が開けた。緑の稲穂の真ん中の道を車は進む。

「地名も真中(まなか)だしね」

学校が見える。ここが生活の中心か。

「ここが元宮摩崖仏(まがいぶつ)」

垂直の壁のような岩盤に彫られた仏たち。

古いとはいえ、剥落がひどい。
不動明王がいらっしゃるのだから、両側にせいたか童子・こんがら童子がいる(いた)はずだが、痕跡しかない。

しかし、保存のいい像もある。後世の“追刻”だろうと言われている。だから、端に彫られているのだろう。

「ご尊名がわからない……」

鏡子さんがつぶやいた。

そう。
仏像をお顔で見分けるのは非常に難しいとされているのだ。
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